ダム浚渫工法と環境配慮の堆砂除去

2020年10月23日 ダム

ダムを維持管理する観点から、ダムの堆砂問題を無視することはできません。

堆砂が進行したダムはダム湖内の水質悪化や河川等への悪影響が懸念されます。さらに、貯水量が減ることで、治水機能の低下さえ危ぶまれるのです。ダムの堆砂問題についてはこれまで繰り返し報道され、国はダムの堆砂を除去する事業を行うよう自治体に求めてきました。一般的な基準として、ダム堆砂率20%を超えていれば堆砂が進行していると判断されますが、国内のダムには堆砂率が30%を超えるものもあります。

ダム堆積の土砂除去のための対策をいくつか示します。まず、浚渫工事でダム湖内の堆砂をとり除くという方法があげられます。貯砂ダムを建設し、ダム湖に流入する前に土砂をいったんためた上でとり除くという方法もあります。ダム周辺に植林して土砂の流出を防ぐ方法も有効です。他にも、ダムに土砂吐きゲートを設置する・バイパストンネルを設置する(洪水時にバイパストンネル経由でダム湖を迂回させて土砂を下流に流す)・下流フラッシュする(洪水時にダム湖から排砂する)などがあります。

ダムの堆砂対策として効果が見えやすく、かつ環境負荷が小さい浚渫について詳しく説明します。

ダム浚渫工法には次のような種類があります。

○バックホウ浚渫

運搬組み立て式の浚渫船にバックホウを搭載する方法です。軟質土から硬質土まで適性があります。また、比較的浅く、障害物が少ない中小規模のダム浚渫工事に適しています。
堆積土が軟弱で、掘削除去出来ない場合は、地盤改良工法などを使って、固化処理を行いながら、掘削作業を進めて行きます。

○グラブ浚渫工法

グラブバケットでダム湖底の堆砂をくみ上げる方法です。軟弱土から硬質土まで幅広く対応できます。障害物への対応力も高く、かつ、様々な深度に適用できる工法です。

○ポンプ浚渫工法

ダム湖底の堆砂をカッターで崩し、浚渫船内のポンプで水と堆砂を吸い上げる方法です。粘性土や砂質土に向いています。障害物が少なく、平坦で広大な地形での作業が得意です。

ダムを浚渫する方法は、ダムの立地や、作業現場の地形の他、堆砂の性質や量、処分方法など全般的に考慮して選択します。もちろん周辺環境への影響も吟味する必要があります。

浚渫に必要な重機を管理している土木業界の企業が施工にあたるケースが一般的です。建築などの事業と比較すると浚渫は簡単な作業に見られがちですが、環境保護や安全確保の観点から高い技術と知見が求められます。能力の高い技士が在籍し、充分な設備のある企業でなければ浚渫工事を行うことは難しいでしょう。

なお、ダムの浚渫土は、産業廃棄物として施設で処分されるか、盛土材やコンクリートの砂利として有効活用されます。

ダムの堆積物を浚渫によってとり除くことがダムの維持管理に必要です。