材料特性について

セメント協会において、改良土からの毒性を持つ六価クロムが土壌環境基準値(0.05mg/L)を超えて溶出しやすい土質を特殊土とされています。特殊土用固化材は、これら特殊土の固化を対象としたものです。

一般軟弱土用固化材は、砂質土や粘性土等の軟弱土の固化に適用されます。
火山灰質土(関東ローム他)等では、改良土からの六価クロム溶出に関する可能性が高く、また、特殊土用固化材は砂質土や粘性土等の軟弱土にも適用するため、特殊土用固化材の使用が年々増加しています。

なお、特殊土用固化材を使用しても改良土からの六価クロム溶出量を完全に抑えることはできません。
そのため、地盤改良工事の前に改良対象土と使用固化材を用いた事前試験を行い、改良土からの溶出量が環境基準値(0.05mg/ℓ)以下となる事を確認することになってます。

高有機質土用固化材は、固化材の水和反応の阻害要因となる有機物を多く含む土の改良に適した固化材です。但し、有機物の質と量及び要求される改良効果等によっては、汎用固化材でも対応可能な土もありますので、事前に土質性状を把握して配合試験により強度発現性を比較して、より経済的な固化材と配合量の設定を行ってください。

セメント協会においては、セメント系固化材と石灰系固化材及びセメント系固化材と石灰系材料を混合したセメント・石灰複合系固化材の3種類に分類されています。
日本石灰協会では、生石灰を50%以上含む材料を「石灰系」に分類されています。

セメント系固化材は土砂や泥土など固化することを目的に、セメントの特定成分や粒度の調整をした特殊なセメントをいい、幅広い土質において長期に亘って安定した強度が得られます。
石灰系固化材は、生石灰及び消石灰をベースに複数の有効成分を添加したもので、発熱・蒸発が起きることから主に極短期間に軟弱土の物性改善を目的とした改良(残土や泥土の処理)等に用いられます。

セメント系固化材を粉体で使用する浅層混合処理工法では、固化材の散布・混合攪拌時に粉塵が生じる場合があります。
近年、市街地や耕作地近隣の地盤改良工事では、環境に配慮した施工が求められており、発塵抑制型固化材を用いた浅層混合処理工法の採用が増えております。
発塵抑制型固化材は、製品により特徴が異なりますので、各メーカーへお問合せ願います。

高炉セメントは普通ポルトランドセメントに比べて初期強度は小さく、長期強度は同等程度にまでなります。

一般に、4週間経てば普通ポルトランドセメントと同等以上の硬さになります。このように硬化に時間のかかるセメントであるため、養生期間を長めにとる必要になります。

大まかに優位性は3つあります。
1つ目は、このセメントはアルカリ骨材反応を抑制する効果があることが知られています。2つ目は、硫酸塩などにも強い性質を持つことから、用途としては、海水や下水に触れる箇所や、マスコンクリート、熱を受ける可能性のあるコンクリートや土中、地下構造物のコンクリートに使われます。3つ目に、緻密な硬化体となるため、水を浸透させにくいという特質もあります。このため、水密性が求められる現場でも用いられます。

セメント原材料には、もともと自然由来の三価クロムが含まれています。
三価クロムの一部は、セメントの焼成過程で酸化され、通常自然界に存在しない六価クロムとしてセメントに含まれます。コンクリートやモルタルの固化過程では、水和反応により生成される水和物に六価クロムが固定され、固化後に六価クロムが溶出することはほとんどありません。

ところが、地盤改良でセメントを使用する場合、土を構成する土粒子である粘土鉱物や有機物の種類によっては、水和物の生成が阻害され、固定されなかった六価クロムが溶出することがあります。たとえば、関東ローム層や九州中央エリアに分布する火山灰質粘性土層がセメントの水和に必要な Ca イオンを吸着し、六価クロムを固定する水和物の生成が妨げられる例があります。

固化特性について

セメント系固化材は、砂質土や粘性土だけでなく、ヘドロや高有機質土などの軟弱土や幅広い用途に適用できますが、改良土の強度発現性は、改良対象土の土質性状や使用固化材の種類及び添加方法や添加量などにより異なります。

地盤改良工事における配合設計に当たって、改良目的や効果及び改良対象地盤の状態や施工方法等、所要の設計強度を発現する為の固化材の種類と添加量を考慮する必要があります。

特に、添加量の設定に大きく影響する改良土の強度発現に影響を及ぼす因子として、外部環境だけではなく、改良対象土の特性、改良材の状態、攪拌・混合状態、養生条件等が考えられます。

改良土の材齢7日と28日の強度は、材齢の経過により水和反応が進化して増加します。
改良土の強度の伸び率は、材料の種類によって違うだけではなく、改良対象土の性状や土質、使用する固化材の種類及びその添加方法や配合量、養生条件などにより異なりますが、一般的に1.2~1.7倍と記されています。詳しくは、各メーカーに問い合わせすることをおすすめします。

特殊土用固化材の改良土からの六価クロム溶出低減効果の確認や周辺土壌への影響を調べるために、既存のセメント系固化材に加えて高炉セメントB種および試験施工を行い、特殊土用固化材は他の材料に比べて六価クロム溶出低減効果が高いことが判りました。
改良地盤周辺の土壌を調査したところ、いずれの材料を用いても周辺土壌に影響はなかったことが確認されてます。

セメント系の材料は、気温(養生温度)が高いとき水和反応が活発で、気温(養生温度)が低くなるに従って緩慢になり、0℃以下になると強度の発現が期待できません。
セメント系固化材を用いた改良土においても同様の傾向が見られます。低温時施工の場合、低温養生による強度低下を想定した添加量の割増しや養生方法の工夫が必要になります。

地質・配合試験について

セメント系固化材による地盤改良とは、工場のようなJISで規定された製品を用い硬化するコンクリートと違い、自然に存在する多種多様な土を固化するものです。
外部環境や土質性状(含水比、粒度等)により、強度発現効果が全く異なります。
そのため、改良前に施工対象土の室内試験を行うことにより、設計と施工の乖離を防ぎ、施工の経済性や安全性の向上に繋がります。
室内配合試験の目的は、所要の設計強度を発現するための固化材の種類と添加量を決定することにあります。
地盤改良を行う場所は、地層や堆積場所の違い等によって性状が変化しますので、土の性状の変化を想定し、事前の室内配合試験を実施しています。

配合試験のアプローチが2種類あり、浅層改良と深層改良によって、大きくことなります。

①浅層改良の場合

試料採取箇所は、基本的には発注機関の指示によります。
採取の際の注意点として一般的には、改良平面範囲の中で土質(色調)が明らかに変わっている場合、その土質ごとに試料採取する。鉛直方向に改良深さの範囲で土質が変わっている場合も同様に試料採取する。採取した試料は含水比が変化しないよう袋等に入れ、密封します。

②深層改良の場合

一般的にはボーリングにて、所定の改良深さまで試料を採取します。深度によって土質が異なる場合は、土質ごとに配合試験する方法と安全側に一番強度発現の低いと予想される土質にて配合試験を行う方法などがあります。詳細については、ボーリング箇所数も含め発注機関の指示に従ってください。

試験の種類や内容と供試体作製本数によって異なります。

・一軸圧縮試験 10~20㎏採取時 1土質×1固化材×3添加量×2材齢×3本
・CBR試験 50~60㎏採取時 1土質×1固化材×3添加量×1材齢×3本
・コーン貫入試験 50~60㎏採取時 1土質×1固化材×3添加量×1材齢×3本

検討する固化材が多くなる程、採取する土量は多くなります。

一軸圧縮試験から求められる改良土の一軸圧縮強さは、主に構造物基礎地盤の支持力や土圧、斜面の安定等の安定を評価するのに必要な値であり、改良土の強さを表す値として固化材の選定や添加量の設定に用いられます。
 CBR試験で求められる安定処理土のCBRは、道路の路床安定処理における安定処理土の支持力比(標準荷重強さとの比率)を表す値であり、原地盤のCBRと併用することで処理厚さや固化材の選定、添加量の設定に用いられています。

環境への影響

改良土は土木構造的には安定しますが、植物の根の育成にとっては環境的阻害要因となる可能性があります。改良土の表面の緑化は、改良土の上に、良質土の敷き込みや覆土により植栽を行ったり、大型コンテナを設置したりして緑化をすることが可能です。植生に関しても、樹木の大きさと土層の厚さについても、相関関係が成り立つため、大きな樹木は、厚い土層が必要となってきます。
また、改良を施した盛土面も間もなくして雑草地化している等の現象がみられることから、固化処理面への直接緑化の可能性が注目されています。このことは、植生の種類ごとに、土の強度・硬度が影響しています。根の発達を促進するために、施肥を行うことで成長促進が可能であることが確認されています。

施工後短期間は少なからず表面からアルカリ分が溶出されます。
海、河川、湖等十分な水量がある場合は水量に対して溶出するアルカリ量が極めて少ないため、影響が出る可能性は低いと考えられます。
一方、小規模な水路や小さな池等水量が少ない場合においては、改良土から溶出するアルカリにより池等の水のアルカリが高くなる場合があります。
その場合には、アク抜きや中和処理機のよる炭酸ガス等による中和、覆土の施工などでアルカリを低減することが可能です。

六価クロムは発ガン性物質で、土壌汚染対策法で定められた特定有害物質です。
柱状改良工法では、現場の土の特性と混合させるセメント系固化材の相性によって、六価クロムが(環境基準値を超えて)溶出するリスクがあります。

セメントの原料の中には三価クロムが含まれます。 三価クロムは毒性が無く、安定した物質で、簡単には六価クロムにはなりません。 しかし、セメントを製造する過程で、材料を高温で焼成する際、三価クロムの一部が酸化して六価クロムに変わります。
セメントは、水と混ざると水和反応という化学反応を起こして硬くなります。 水和反応によって生成される水和物の中に六価クロムが閉じ込められるため、固化後に六価クロムが溶出することはほとんどありません。

土の中には腐植土や火山灰質粘性土(ローム)が、層となって厚くなっている地層が多くあります。 柱状改良工法の場合は、現地の土とセメント系固化材を混合攪拌する必要がありますが、 これらの土はセメント系固化材で固まり難い特性がある為、水和反応を阻害され、本来閉じ込められているべき六価クロムが溶出します。
六価クロムの溶出には環境基準値(0.05mg/ℓ以下)があります。 地盤改良工法などを施工する前には、セメント系固化材と土質との相性を、試験を実施して確認し、六価クロムの溶出量が環境基準値(0.05mg/ℓ)以下となる固化材を使用する必要があります。
この相性や適性を確認する試験が六価クロム溶出試験で、環境省告示46号溶出試験に準じて環境基準への適合確認を行うものになります。

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