ダム堆砂率の上昇を防ぐ浚渫工事

2020年11月12日 ダム

ダムやため池の維持管理において堆砂率の指標は重要です。堆砂率の高いダムの存在を根拠に「ダムはいずれ砂で埋まる」との声もありますが、実は堆砂率が100%になることはダムに寿命が訪れることを意味しません。ダム浚渫などの対策を行うことでダムの長期使用は実現します。

ダムは河水を堰き止めると同時に上流からの流砂をも堰き止めるので、堆砂が起きるのはダムにとって宿命ともいえます。堆砂の進行速度は地理的条件によって大きく異なります。急峻な地形に建設されたダムの場合は、流れの速い河川によって大量の土砂が運び込まれるため、その分堆砂の進行が速い傾向にあります。

一般に、堆砂率が20%を超えた状態を堆砂が進行していると呼びます。日本国内においても堆砂率が20%を超えるダムは各地にあります。堆砂の進行によって引き起こされる環境問題は、河床低下、河岸浸食、海岸侵食などです。また、ダム貯水池内にたまった有機物がヘドロ化する問題も起こります。さらには堆砂が進行するとダム本来の機能が充分に果たせなくなる恐れもあります。こういった事態を防ぐためにダム貯水池内の堆砂対策は欠かせません。

しかし、全国のダムの堆砂率などの報道を目にして、「もうすぐ使えなくなるダムが国内にたくさん存在する」と捉えるのは早計です。

ダムは設計される段階において100年間に貯水池内に堆積すると予測される土砂の量が見込まれています。このあらかじめ設定された堆砂容量のうち、堆砂が実際どのくらい貯まったのかを示すのが堆砂率です。仮に堆砂率が100%になっても、洪水調節容量や利水容量は別に確保されています。つまり、堆砂が計画を上回って進行していることや、堆砂率が100%になったことで、すぐさまダムが使用できなくなるということではないのです。

もちろん堆砂が進行している状態を放置しておくことはできません。ダム本体の掘削・浚渫工事や貯砂ダムにいったん貯めた上での浚渫、排砂ゲートや排砂バイパスなど様々な方法があります。定期的にダムの堆砂対策を行うことで、ダムは半永久的に使用できる可能性すらあるのです。

計画堆砂量を上回って堆砂が進行している事情は、近年頻発している豪雨による急激な増水や流域内での土砂崩れなどが背景にあります。予測を上回る量の土砂がダムやため池の内部に流入したということです。予想外の異常気象が発生しやすい昨今においては、定期的なダム浚渫工事の重要性はさらに増しています。