河床を石灰で地盤改良し強度を高める

2021年02月06日 河床

河床の軟弱な地盤の改良や、堤防の強化のために、石灰で地盤改良することはよくあります。地盤改良において、石灰はセメントに次いでよく用いられる固化材です。この記事では、河川工事で石灰が用いられる事例や、固化材としてのセメントと石灰の違いや使い分けなどを説明します。

固化材として石灰が使われた歴史は長く、古代ローマで使用例があるといわれるほどです。

河川工事で石灰が用いられる例としては、軟弱な河床の地盤を重機が走行できる強度のある地盤に改良するために石灰・石灰系固化材を地盤上に散布して混合・攪拌する、堤防の土質を強化するために石灰・石灰系固化材を混ぜるといったものがあります。

地盤改良に石灰またはセメントを用いる場合、どの程度の石灰量・セメント量があれば、強度を発揮するかは、その現場ごとの土質によっても大きく変わるため、室内配合試験での配合量決定が一般的です。 しかしながら、強度の発現と添加材配合量の相関関係から、大幅に少ない添加量で施工をしてしまうリスクを防ぐために、「石灰系固化材」「セメント系固化材」。『石灰による地盤改良マニュアル』(※)および『セメント系固化材による地盤改良マニュアル』(※)においても、セメントや石灰の最低添加量の指標を設けてあります。石灰の最小添加量の目安は30kg/m3、セメントの最小添加量の目安は50kg/m3とされています。

これは、室内試験と現場施工の条件の違いや、改良を行う場所の土質性状、固化材のコンディションや攪拌・混合の行い方など、総合的に判断して添加量を決定するので、下限値にかしては、リスクを防ぐという事情があるためです。

地盤改良の現場における石灰とセメントの使い分けは、石灰は浚渫などの一時的な固化に用いることが多く(先述の、軟弱な河床の地盤を改良する事例もこれにあたるといえるでしょう)、一方でセメントは恒久的な強度維持を目的とした、道路・建物・躯体など、重要構造物の基礎が多いといえますが、ケースバイケースです。セメント成分を嫌う土壌や、河川・河床・港湾など、漁業被害などを懸念する流域では、石灰が用いられることが多い傾向です。

なお、固化材は石灰(石灰系固化材)とセメント(セメント系固化材)に二分されるわけでもなく、石灰の良さとセメントの良さを併せ持つハイブリッドタイプもあります。ちなみに石灰・石灰系固化材の価格は、セメント・セメント系固化材より高額になるというデメリットがあります。

改良を行う地盤の土質との相性や周辺環境への影響に加え、予算や工期など総合して判断した上で固化材は決定されるのです。

 

※「石灰による地盤改良マニュアル[第7版]」日本石灰協会

 

※「セメント系固化材による地盤改良マニュアル[4]」セメント協会(H24.10