浚渫土の地盤改良による再利用

2022年09月26日 ダム

浚渫土は、そのままでは水分過多・強度不足により再利用が難しい特徴があります。そこで、凝集材やセメント及びセメント系固化材等を用いて地盤改良を行い、所定の必要強度を与えて築堤などに再利用することが可能です。ここでは、再利用手順・再利用例を紹介します。

浚渫士の地盤改良

ダムの地盤改良

浚渫土とは

浚渫された土砂は基本的に「廃棄物」扱いされます。近隣の建設現場などで、コンクリートの骨材や埋戻材などに再利用される川砂とは異なり、浚渫工事ですくい取った浚渫土砂は、土質性状や再利用の用途に応じた要求品質、経済性等を考慮して、そのまま利用する、安定処理後に再利用する、脱水処理後に再利用する等と適切な方法を選定することが重要になります。更に、分級や安定処理を利用する際には、添加する凝集材やセメント及びセメント系固化材等によって溶出水のpHや六価クロム等有害物質の溶出に留意する必要があります。

 

地盤改良の目的

  • 建築構造物の基礎
  • 盛土地盤の安定処理
  • 路床、路盤の改良
  • 仮設地盤の築造、重機の作業足場
  • 護岸(海岸)の強化
  • ため池の斜水、土留め壁の築造
  • 現地発生土のトラフィカビリティーの向上

 

再利用手順

軟質な粘性土である浚渫土の改良技術には、①安定処理、②脱水処理、③分級処理の3つに大別されます。

①安定処理技術(プラント安定処理)

安定処理技術において、もっとも一般的なのが、プラント安定処理と呼ばれるもので、浚渫土を埋立地に投入する前にセメントや石灰等の固化材を添加して任意の強度をもたせる技術です。当該処理技術は、専用のプラント船または陸上に設置したプラント処理設備を用いて行うプラント混合固化処理技術があり、また浚渫土を管路による空気圧送途中で固化材を添加して混合処理する管中混合化処理技術があります。さらに気泡等の軽量材を添加した軽量混合処理土技術および造粒化を積極的に求めた造粒固化処理技術もあります。

 

②脱水処理技術(自然排水、曝気、圧密促進、機械脱水)

脱水処理技術において、自然排水や曝気、圧密促進工法では、軟質な粘性土を広げて時間経過で水分を飛ばす方法です。この方法では、専用機械を使わないため安価なメリットがあるのに対して、広大な用地・自然乾燥に多大な時間を要するデメリットもあります。機械脱水では、真空・遠心・加圧脱水などがあり、自然乾燥よりも短時間で脱水処理が可能です。

 

③分級処理技術

分級技術と、圧送管路途中で効率よく砂分を回収する技術で、スラリー状態で浚渫土砂を輸送し、分級装置内の流速を低下させることにより砂分を沈降分離・回収します。回収した砂は、盛土・埋立て・路床・路盤材などの土木資材、サンドドレーン、サンドコンパクションパイルなどの地盤改良材等として利用されます。

 

再利用事例

浚渫土を受け入れる土砂処分場のうち、定期的に浚渫工事を行う1級河川等の近接処分場では、計画受け入れ量上限に近い施設も増えてきています。そこで、受入れ土量を増やすためにも、浚渫土を改良して築堤などに再利用する計画等が進められています。改良手法は、石灰等のセメント系固化材で改良することで土質強度を向上させる方法が一般的です。しかし、浚渫土にはダイオキシン成分が含まれているため、築堤などに再利用するにあたり、強度試験の他に、ダイオキシン類の含有量試験、溶出量試験等が必要になります。改良土を再利用するための強度基準は、「建設発生土利用技術マニュアル」に準拠し、第2種建設発生土相当の現場強度qc=800(kN/m2)が求められます。ダイオキシン類の含有量や溶出量は、「河川、湖沼等における底質ダイオキシン類対策マニュアル(案)」に準拠して適用の可否を判断します。セメント系固化材による改良試験結果では、添加量200kg/m3以上で第2 種改良土の区分となり、河川堤体には問題なく使用できる試験結果等もあります。