ため池の抱える課題と安全対策

2021年10月21日 ため池

ため池とは主に農業に資する目的で築造された池を指します。ため池に貯めた水を、少雨など水が必要な際に田畑へ送水するのです。これによって農作物を安定して栽培してきた長い歴史があります。この記事では、ため池の構造と課題・安全対策を説明します。

ため池の構造

ため池の構造と名称を説明します。ため池は堤によって水を貯め、田畑で水を使う際に取水施設で水を送り出します。取水施設としては立樋および底樋があります。立樋はため池の底から伸びており、さまざまな高さにうたれた栓から水を流せる構造になっています。水位の上昇・下降に応じた高さの栓を開ければよいというわけです。一方の底樋は立樋の下から堤を通ってため池の外に通じ、水を流す構造となっています。

これらの取水設備の他に、豪雨や台風に備えた放流設備もあります。大幅な増水で堤が被害を受けることを防ぐため、堤の一部をあえて低く設けて、キャパシティを超えた分を早めに排出する洪水吐きがこれにあたります。

ため池の課題

ため池が宅地や農地より高位にある場合、災害時に堤が決壊して水害が起きる恐れがあります。決壊による水害はため池の大きさに関わらず起きています。対策として、農林水産省は2018年に、決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設が存在し、人的被害を与える恐れのあるため池・「防災重点ため池」の選定基準を見直しました。基準に基づいた調査および再選定が進められているところです。

ため池には水害以外にも課題があります。ため池の水質が悪化すると悪臭が発生し、周辺住民が迷惑をこうむることになります。ゴミが不法投棄されるケースも報告されています。ため池の維持管理のためにはこれらの課題にも対応する必要があります。

ため池のうち大部分は水利組合または集落の営農者等を主体とした組織によって管理されています。しかし、農家が減り土地の利用のしかたが変化していく中、管理体制が不十分になることが心配されています。

ため池の安全対策

ため池周辺の被災を防ぐためには管理者が安全意識を高め、適切な対応をとることが大切です。決壊を防ぐため、ため池の堤体の地盤改良が必要なケースもあります。また、水質改善やゴミの除去のためにも、ため池の浚渫などの対策が求められます。ため池を水抜きする掻い掘りなども有効です。

ため池を適切に管理することで機能保持と安全につなげましょう。